4+2=無理数
二級になってから最初の合同任務は知り合いだった。
任務帰りの車内は静まり返っていた。
(ああああどないしよ…同年代の女の子って何喋ればええんこれ、大人数の時は普通に喋れるんに二人きりになると喋れん、アカン気まずい気まずい帰り道一時間あるんに…)
空気が心なしか重苦しい。多分相手は窓の外でも眺めているのだろうが自分が耐えきれない。メンタルの弱さは自負している。
「……なぁ、好きな子とかおるん…ですか?」
裏返り気味な声を掛けられた相手はぱっとこちらを向いて、パチパチと瞬きをした。話題チョイスミスったなこれ。死にたい。
「……好きって言うか、好きではあるんですけど恋なのかなんなのか分からない…って感じの人はいますね。」
冷や汗が止まらない。なんせワイは隣の彼女に好意を向ける相手を知っているのだ、これで違う相手だったら今後二人とどう接すればいいのかわからない。訂正、一人はすでにどう接すればいいかわからない。
「ふーん、どんな人なん?」
全力で平静を装う。多分装えてない。声が震えているのが自分でもわかる。もうダメです死ぬしかありません。
「うーん、なんていうか…ちょっとお茶目で、優しくて、自由で…私なんかより、ずーっと強いんです。手の届くような届かないような、距離が近いようで踏み切れないような…ごめんなさい、よくわかんないですよね?」
耳から脳へ走り抜けるその言葉に、ふうと息をつく。
「さよか。……これは勘なんやけど、君なら手の届くとこおると思うで」
これは、余計なおせっかいなんかなくても近いうちに祝福することができるだろう。何が何だかわからないといった顔の彼女の前で、ふっと笑みがこぼれた。